ワダツミノキ
観察月
基本情報:奄美大島のみに自生する極超希少な固有種の落葉小高木です。2004年にクサミズキから独立した新種として記載され、奄美大島出身の歌手・元ちとせさんの大ヒット曲『ワダツミの木』にちなんで命名されました。植物体内に抗がん剤の原料となる成分を含有しており、現在は保全のためのクローン増殖技術の開発が進められています。 形態的特徴: 花: 5月〜6月頃に開花します。枝の先端に円錐花序を出し、淡緑色の小さな花(直径3〜4mm)を密生させます。花弁は5枚で内側には綿毛が密生しており、花弁の長さは7〜9mmと、近縁のクサミズキに比べて大きいのが特徴です。また、雄しべの葯隔(やくかく)が短く顕著に突出しています。 葉: 枝先に集まって互生します。葉の質は洋紙質で、倒卵状楕円形から長楕円形を呈し、長さ10〜17cm、幅6〜9cmほどになります。近縁種との大きな違いとして、葉の基部が截形(水平)または浅い心臓形をしています。 茎: 冬芽は裸芽であり、植物体全体(特に芽や小枝)に褐色の軟毛が密生しています。 分布域 / 生育環境: 鹿児島県奄美大島の固有種です。潮風を受ける海岸近くの林縁部など、限られた環境にのみ生育します。 花期: 5月〜6月(例年5月10日頃からの開花が観察されています) 利用法: ワダツミノキは細胞分裂を阻害する抗がん活性物質「カンプトテシン」を高濃度で含有しており、医療用半合成薬(イリノテカン)の原料としての高い価値が認められています。特に芽に近い先端部分ほど含有率が高いことが判明しています。野生での採取は禁止されていますが、森林総合研究所などにより組織培養によるクローン苗木の増殖技術(保全バイオテクノロジー)が確立されています。 レッドデータ等: 環境省レッドリストで「絶滅危惧IA類(CR)」に指定されています。また、鹿児島県指定希少野生動植物や「奄美大島5市町村の希少野生動植物の保護に関する条例」の対象となっており、採取・捕獲・移植・損傷などが厳しく禁じられています。野生個体は数十本程度しか確認されていない幻の木です。