ヤマヒハツ
観察月
奄美大島の深い森や林縁が観察ポイント。ヤマヒハツは、倒披針形の葉とブラシ状の花、秋に黒く熟す実の外見的特徴を持つ常緑低木です。昔懐かしい森のおやつを探しに、自然散策に出かけませんか? 基本情報: 本州(和歌山県以南)から四国、九州、奄美大島などの南西諸島、台湾、中国南部、東南アジアにかけて広く分布する常緑低木です。秋に黒紫色に熟す果実は甘酸っぱく、昔から島の子どもたちの天然のおやつとして親しまれてきました。香辛料として知られるコショウ科の「ヒハツ」と名前が似ていますが、全く異なる非つる性の自立する樹木です。 形態的特徴: 花: 雌雄異株です。春から初夏(3〜5月頃)にかけて、枝先や葉の脇から総状花序(ブラシ状)を出して、花弁のない小さな花を多数咲かせます。独特の強い(やや不快な)芳香を放ち、特定の昆虫を誘引する役割があると考えられています。 葉: 互生し、倒披針形から倒卵状長楕円形をしています。縁はギザギザのない全縁で、先端は尖り、やや革質です。同属のシマヤマヒハツと比較すると、全体的に葉脈の数が多いという特徴があります。 茎: つる性を持たない自立性の木本です。属名の「*Antidesma*」はギリシャ語で「帯・紐の代用」を意味し、かつてこの仲間の樹皮が極めて強靭でロープなどの結合資材の代用品として利用されていたことに由来します。 分布域 / 生育環境: 本州(和歌山県紀伊半島)、四国、九州、南西諸島から台湾、中国南部、東南アジアの熱帯・亜熱帯地域に分布します。アルカリ性の石灰岩地帯を好む同属のシマヤマヒハツとは異なり、主に内陸側の山地の林内や疎林、林縁の弱酸性から中性の土壌環境に生育します。 花期: 3月〜5月(初夏) 利用法: 雌株に実る果実は心地よい甘みと酸味があり、奄美大島や徳之島などの地域では、ムベやシマサルナシなどとともに、秋の天然の甘味として子どもたちに生食されてきた歴史があります。また、アントシアニンを豊富に含み、泡盛に漬けて果実酒として楽しまれます。さらに、紫色の果実の搾汁液を使って紙に絵を描くと、空気酸化や金属イオンとの反応により「紫色」から「灰色」へとドラスティックに変色する特性があり、島の小学校の図画工作の授業などで天然絵の具として活用されています。