アオノクマタケラン
観察月
奄美大島の薄暗い林床で輝く植物、アオノクマタケラン。完全無毛の葉や、白地に紅色の斑が入る可憐な花という外見的特徴が魅力です。湿った沢沿いが主な観察ポイント!伝統的な利用法も紹介します。 基本情報: 奄美大島をはじめとする南西諸島に広く自生する常緑多年草。葉に強い防腐・抗菌作用があり、地元では古くから生活に密着した有用植物として親しまれている。 形態的特徴: 花: 長さ10〜40cmほどの総状または円錐花序を茎の先端から直立させる。花は長さ約2cmと小振りで、白地に鮮やかな淡紅色から紅色の縦方向の条線(斑紋)が2本入り、黄色味を全く帯びない。雄しべが鶴の首状に湾曲している。 葉: 長さ30〜50cm、幅6〜13cmの狭長楕円形で、先端が鋭く尖る(鋭尖頭)。最大の識別特徴として、葉の表面・裏面の主脈、縁にいたるまで一切の毛がない「完全無毛」であり、革質で強い光沢を持つ。 茎: 地下の多肉質な根茎から直立する偽茎を群生させる。 分布域 / 生育環境: 日本国内では伊豆諸島、本州(紀伊半島)、四国、九州、大東諸島を除く琉球列島などに分布。国外では台湾、中国南部、フィリピンなど。海岸沿いから山地森林内の、湿り気のある日陰〜半日陰環境を好む。 花期: 4月〜8月(奄美大島などの亜熱帯地域では主に4〜6月頃に開花) 奄美特有情報: 方言: サネン(奄美大島)、サンネン(与論島)、ムジギャハ(徳之島)、ムチサニン(沖永良部島)、ヤマバシャ(喜界島)、ヤマザネン 利用法: 葉の強い抗菌・防腐作用を活かし、おにぎりや奄美特産の「かしゃ餅(よもぎ餅)」を包むのに用いられるほか、生魚の下敷きなどにも使われてきた。種子は「黒手伊豆縮砂(クロデイズシュクシャ)」、根茎は「廉姜(レンキョウ)」という生薬になり、芳香性健胃薬や胃痛・咳止めとして重宝されている。近年では、抽出成分(β-ピネンなど)がアトピーや肌の炎症・かゆみを抑え、皮膚バリア機能を保全するとして、国産ボタニカルスキンケア化粧品にも応用されている。 レッドデータ等: 国レベルの指定はないが、和歌山県など一部自治体では沿岸林の改変等により絶滅危惧II類に指定されている。