ヤンバルツルハッカ(ヤンバルクルマバナ)

ID 0226

観察月

5月
2026年5月

奄美大島で見られるヤンバルツルハッカは、全体が白い毛に覆われた外見的特徴を持つシソ科の野草です。観察ポイントは、這うように伸びる茎とふかふかの白い唇形花。日当たりの良い海辺を探してみましょう! 基本情報:南西諸島を中心に分布する亜熱帯・熱帯性の多年生草本です。極めて高い光要求性を持ち、過酷な乾燥や塩水噴霧に耐えるため、植物体全体が白い柔毛で覆われ白っぽく見えます。「ツル」「ハッカ」という名がついていますが、巻き付く蔓性器官は持たず、ハッカ特有のメントールの香りもありません。 形態的特徴: 花: 枝の上部の葉腋に、2〜8個の花がまとまって輪散花序(擬頭花序)を形成し、各花序は互いに離れて位置します。花冠は長さ8〜12mmの白色の2唇形です。上唇はフード状で、外面に白い柔毛が極めて密生し「ふかふか」とした外観を呈します。下唇は3裂して展開します。萼は長さ4〜5mm(果時には6〜7mmに伸長)の筒状で、10本の縦脈と長短交互の10個の萼歯を有します。 葉: 対生し、長さ0.5〜3.5cm、幅0.5〜2.5cmの卵形から卵円形をしています。海岸の乾燥や潮風に対抗するため多肉質傾向で厚みがあり、両面(特に裏面)に白い毛が密生しています。縁には3〜5対の円く鈍い粗い鋸歯があります。葉柄は長さ1〜5mmと極めて短いです。 茎: 断面は径1〜2mmの細い四角形です。基部から非常に多く分枝し、地表を這うように展開(匍匐)した後に先端が斜め上方へと立ち上がります。表面には下向きに伏した白い柔毛が密生し、微気候の空気層を作り出して蒸散を抑制しています。 分布域 / 生育環境: 九州南部(トカラ列島口之島以南)から奄美諸島、沖縄諸島、八重山諸島を含む南西諸島全域。国外では台湾、中国南部、フィリピン北部、南アジアなどに広く分布。強烈な直射日光と潮風を受ける海岸の岩場や隆起サンゴ礁、荒れ地などを好みます。 花期: ほぼ周年(温度が保たれる限り継続的に開花します)。 レッドデータ等: 環境省の全国レッドリストでの指定はありませんが、鹿児島県では「準絶滅危惧(NT)」に指定されています。また、近年の研究では、沖縄島などの個体群において生息地の断片化により遺伝的多様性が極度に低下しており、地域個体群の絶滅リスクが極めて高いことが指摘されています。広域分布種ではあるものの、局所的な環境変化に脆弱な側面を持っています。

シソ科 オドリコソウ亜科 ヤンバルツルハッカ属
学名 Leucas chinensis (Retz.) Sm.