イジュ

ID 0114

観察月

5月 6月

基本情報:樹高10〜20mに達する常緑高木。梅雨時期(5〜6月頃)にツバキに似た純白の美しい花を一斉に咲かせ、甘い香りを漂わせる。かつては樹皮の毒を利用した漁法や、頑丈な木材として建築等に重宝された、奄美の自然や文化と深く関わる植物。 形態的特徴: 花: 3〜6月(奄美などでは主に5〜6月の梅雨時)に、枝先の葉の付け根(葉腋)から長さ約2cmの花柄を伸ばし、直径4〜7cmの白い花を咲かせる。花弁は5〜6枚で広卵形をしており、椀状に丸まる。中央には黄色の葯を持つ多数の雄しべが放射状に並び、微かに甘い芳香を放つ。ツバキ同様に花弁と雄しべの基部が合着しているため、散る時は花が丸ごと落ちる。 葉: 枝から互生するが、枝の先端付近に集中して輪生状に展開する。長さ7〜15cmの長楕円形から長卵形で、先端は鋭く尖り、基部は楔形。表面は鈍い光沢を帯びた薄い革質で、葉の縁の鋸歯の有無や裏面の毛の密度は変異が大きい。2〜3月頃に展開する新芽は鮮やかな赤色に染まる。 茎: 樹皮は暗褐色で厚く、成長すると網状の割れ目と明瞭な皮目が生じる。材は極めて堅く、繊維が緻密で割れにくい(非割裂性)という特徴を持つ。 分布域 / 生育環境: 奄美群島以南の南西諸島(琉球弧)固有亜種(基本種は東南アジア、ヒマラヤ東部、台湾などに分布)。山地の明るい林内や林縁の非石灰岩地帯(酸性土壌)に自生する。 花期: 3月〜6月(開花のピークは5〜6月の梅雨時期)。 奄美特有情報: 方言: イジュ、イズ(※「イジュ」自体が南西諸島での地方名に由来し、和名として定着している)。 利用法: 樹皮に「サポニン」という天然の界面活性物質(魚毒性を持つ)を多量に含む。かつて奄美や沖縄では、樹皮を粉砕して川や潮溜まりに流し、魚を麻痺させて捕獲する「魚毒漁(毒流し漁)」が行われていた。また、このサポニンは農作業による皮膚のかぶれ(肥え負け)の民間薬(洗浄・消炎)としても利用された。材は極めて堅くシロアリにも強いため、奄美大島特有の建築物「高倉」の柱や、建築用の本柱、丸木舟(サバニ)の材料として重宝された。木灰は沖縄そばの「かんすい」としても利用された。

ツバキ科ヒメツバキ属(スキマ属)
学名 Schima wallichii subsp. liukiuensis (または Schima wallichii ssp. noronhae 等)